- 惣太郎
- 「これで、少しは暖かいですか?」
- ラピス
- 「……はい……」
先生の身体は冷たい風を遮り、
徐々に私をあたためてくれる。
耳元で吐息が聞こえるほど近くに先生の顔があることを、
自然と意識して少しだけ緊張してしまう。
それなのにどうしてだろう。
近づけば近づくほどその存在が遠くなっていくような、
そんな奇妙な感覚に襲われる。
- ラピス
- 「……壬生先生……」
- 惣太郎
- 「………」
- ラピス
- 「先生……?」
呼びかけても、なぜか先生は答えてくれない。
もしかすると後ろにいるのは
本当は先生ではないのではないか。
そんな子どもじみた不安に襲われた時だった。
- ラピス
- 「……!」
先生が、ふいに私の耳元に頬を寄せた。
さらさらの長い髪が、私の肩を滑り流れていく。
- 惣太郎
- 「……すみません。このまま、少しだけ……」