- ラピス
- (この手を放ったまま職員室にはいけないし、どうしよう……)
困り果てていると、窓際のベッドの辺りで、何かが動く気配がした。
ベッドはさっきから何度も目に入っていたはずなのに、
そこに『何か』がいることに、まったく気づかなかったことに驚く。
- ラピス
- 「……誰か、いますか……?」
そっと近づいて行き、ベッド覗き込む。
風が揺らしたカーテンの隙間からこぼれた光が、
一瞬ベッドの上に降り注ぐ。
だから私にはその人が、まるで光の中から生まれたかのように見えた。
淡い色の髪は一本一本が細く、
風が吹くたびにその白い頬を悪戯にくすぐっている。
一見女性とも見紛う繊細な横顔。
けれど、大きな手と、身体を曲げなければ
ベッドからはみ出してしまいそうな長身から、
男性だと推測された。
- ラピス
- (……白衣、着てる)
魔界で白衣を着る職業といえば、
アウインのような研究員か、医者で、これは人間界でも同じだったはず。